2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

小説「虹の樹」

桜の花弁の散った後、樹には沢山の言葉が生い茂っていた。忙しなく街中を歩き回る人々の目には表面的な「失望」しか映らなかったものの。精々、恋人と別れた直後の人が「惜別」の一葉を見出すのが関の山と言った所か。 言葉は一体、誰に対して、どんな思いを…

140字のエチュード―VoL.16

2015年3月31日7:31 鶏もも肉を切る包丁に込められた力は、同時に他の何かも一緒に切ろうとしていた。切先のつっかかりが胸の奥に重たくのしかかってきたものの、その正体を掴むことはできず、貴方はただひたすら包丁の柄を強く握りしめている。緊…