2014-01-01から1年間の記事一覧

140字のエチュード―VoL.11

2014年10月14日5:15 海砂はさらさらとした柔らかい掌で私達の靴底を撫でる様に呑み込んだ。たとえ光が弱くとも重なり合った心身を覆う影は限りなく薄い。それだけで救われた面持ちになれればいいのにと何度願ったことか。それでも瞳は太陽を仰ぎ…

詩「♀ok♂nna」

締めつけられている 今、私の胸は締めつけられている 太陽は優しく そよ風は心地良く 私を取り巻く 平凡でありきたりな幸福 皆の目にはそう映る そう映るように私が振舞っているから そう振舞うように誰かに強いられているから 誰に? もしかしたらそれは 人…

140字のエチュード―VoL.10

2014年9月5日5:27 太宰治の「晩年」や小島信夫の「美濃」には突発的な面白さがあると思う。どういうことかと言うと、適当にぱらぱらと捲った先に綴られてある文章がそれだけでもう既に面白く、読み手は思わずクスッとさせられる。しかも各々の笑点…

140字のエチュード―VoL.9

2014年8月10日0:55 蒲公英の綿毛が空を舞う。それを祝うかのように漂う誰かの鼻歌は電車の通る音と共に過ぎ去っていった。今聴こえるのは蝉の鳴き声ばかり。しかしそれよりも私にとっては彼女の撮った映像の中で繰り返されるつばめの囀りの方がも…

140字のエチュード―VoL.8

2014年7月23日6:29 最近、野良猫との遭遇率が高い。昨日は黒猫、今日は白と茶色の紋様が入り混じった猫。どちらも暑光を避けようとカラダを小さくさせて日陰に隠れていた。熱に蕩けた虚ろな目で影を羨んでいたら見つけたのだが、その時何故か私は…

ミニ説「虚勢」

私は睫毛だ。鼻毛ではない。昨日抜けたばかりなので傍から見ると区別はつかないだろうが、誇り高き睫毛のプライドを守るためにももう一度繰り返し言っておく。私は睫毛だ。それともう一つ、私は昨日死んだ。糞野郎のぶっとい指に引き抜かれて殺されたんだ。…

小説「思い出」

小学生の頃、ぬり消しが流行っていた。机の上に散らばった消しカスをせっせと集めてはぐりぐり。粘土のように押し固めたぬり消しは次の授業が終わるまでなくさぬよう筆箱の隅に閉まっておくのだ。 ぬり消しの醍醐味は何と言ってもライバルと大きさや形を競う…

ミニ説「最後の晩餐」

テレビで矢野顕子が「ラーメン食べたい」を歌っていた。聴いているうちに何だかメン子もラーメンを食べたくなった。が!、彼女は何とかその欲求を堪えた。ダイエット中だったからだ。それに彼女は今、彼女にしては珍しいことに自炊を続けている。しかも何日…

詩「相似」

ボクのベッドに敷かれた しっとり冷えたシーツに 横たえられたマネキン みたいなボクの身体は 忘れようと必死だった 再び起き上がることを ボクのベッドに敷かれたシーツは青かった 晴れ渡る空のように青木繁の描いた海のように 青かったそのはずだったかつ…

140字のエチュード―VoL.7

2014年6月29日6:43 ひさしぶりに棒ラーメンを食べた。おいしかった。葱とハムとわかめを入れた。わかめはいらんやろと思ってたけど意外に合った。あ、普通か。たまたま敬遠してただけかもしれない。わかめはみそ汁に入れるものだと決めつけていた…

140字のエチュード―VoL.6

2014年6月9日4:17 目で聞き耳で見る。そのような芸当は到底誰にも叶えられない現象だと今まで考えてきたし今でも半信半疑だけれど、最近もしかしたら起こり得ることかもしれないと思い直している。実際に目の当たりにしたことはないから説得力にも…

140字のエチュード―VoL.5

2014年5月19日1:21 ASKAさんは私がこの世に生を受けてから憧れた最初の人だった。それだけに今回の事件は難しい。また、最近どこかの小学校でも校長が薬物で逮捕されたという報道を見た。その方も校歌を作曲されていたとのこと。単純に比較はでき…

140字のエチュード―VoL.4

2014年4月25日17:32 彼方よりあゝといふ感嘆の叫び声が聞こえる。まるで耳うちするかのように余りにも微か密やかな余韻を奥深くへ響かさせるそれはほんたうに人間の発したものかそれとも人になる以前の猿人もしくは原人によるものかいまを生きる…

140字のエチュード―VoL.3

2014年4月1日1:15 小学生の時、図書室でまいにち本を借りる女の子がいた。ある日その様子をみていたクラスの担任が「ホントにゼンブ読んだの?」と女の子に問いつめた、ように私にはみえた。女の子はおびえたまなざしで小さくコクリと肯いた。ウソ…

詩「ひるやすみ」

今、僕は 木蔭でやすんでいた ゆっくりとね 平日の昼下がりの午後 これがいわゆるほんの わずかな気休めってやつか? この、かけがえのない それでいてつまらない クーハクナヒトトキ 僕はサンドイッチと アイスコーヒーを手にして それらしくふるまう 必要…

140字のエチュードーVoL.2

2014年2月12日3:29 私事で恐縮ですがブログをはじめてみました。今の所は星新一さん風の自作小説を載せていこうと考えております。えー、全ぜん星さんのと違うじゃん、とお気に召さない方もいらっしゃるでしょうが、あくまで個人の趣味の範囲で書…

小説「美女」

「お願いします。どうか私を逮捕してください」 突然交番の前に現れ、私に対してその言葉を発したのは一人の若い女だった。この辺りは普段から人通りも少なくめったに交番を訪ねる人間もいないため、私はこの奇妙な申し出によって動じた心情を咄嗟に誤魔化そ…

小説「月のぼやき」

ぼくは月。いつも夜空に浮かんでみんなを見守っている。たまに仕事疲れの大人が、ふと、足を止めてぼくを見上げたかと思えば、どことなく元気になってくれているのが嬉しい。もちろんぼくは大人だけじゃなくて子供達のことも大好きだ。特に寝る前にぼんやり…

小説「ふとんの惑星」

ここはふとんの惑星。ふとんの敷き詰められていないところはどこにもない。一見、山のように見えるところには深緑色のふとんが、海とも湖ともとれるような場所にはグラデーション状となった青色のものが折り重ねられている。そこで人々は特別に何かをすると…

小説「カタストロフィ?」

「この星はもう終わりだ」 誰かの落胆した声が荒れ狂う暴風雨の鳴らす騒音に掻き消された。しかしそれはもはや言うまでもなく、誰の目にも明らかなことだった。 水と緑が豊富にあって暮らしやすかったこの星をここ数年の異常気象が滅茶苦茶に破壊した。気温…

詩「よっぱらいんらん」

生骸 より立ち昇る 瞳には決して映る ことのない素粒子 散りゆく紅葉を風っ と 間に間に甦らせよう とっとっおっとっと かめらのふぁいんだー 越しにのほほんと微笑 冬の陽光に透きとおる め尻の奥にのびる頬骨 にゅるるんにゅるるん なめらかな音をたてて …

詩「翼」

いつも君はついてきていた 僕の歩くその後ろを はしゃぐように 生き急ぐように いつも君は駆け回っていた 小さな家の空間を 僕の生まれる前からずっと・・・ 僕がこの世に存在しなかった時 いつも君は 誰の糸に導かれていたのだろうか 君がいなくなった 現在…

詩「ななをあいして」

みみを澄ませて 泡沫のはじける 音 うずまき響いて 鍾乳洞しんどう 寒気にふるえて 氷柱つらつらら ゆび先に触れて 冬を受けとめて 愛・・・・して 狼ノカミ逆だち 三日月に吠える 黄色い鳴き声が 人 肌にこだまして 海を金色に染め 目には見えない 幻想風…

140字のエチュードーVoL.1

2013年12月6日6:49 国会議事堂前。私は皆の一員となり必死に叫ぶ。特定秘密保護法案反対!反対!思い虚しく法案は成立される寸前。しかしそれでも尚、集団は叫ぶ。私も唱える。反対。直に法案は可決された。私は知らない人々の陰でそっと独り呟い…

小説「幸福な未来」

ある日の夜のこと、大学から帰宅した青年が自分の部屋の中に入るとそこには見ず知らずの老人がいた。老人はいつも青年の座る椅子に我が物顔で腰掛けていた。 「何なんだ。勝手に人の部屋に忍び込んだりして。不法侵入の罪で警察に訴えますよ」 「いやいや、…

小説「眼鏡」

ここはとある発明家の研究所。そこへ客として一人の男がやって来た。 「噂によるとここは依頼者の欲しいものを何でも開発してくれる研究所だと窺ってきました。ぜひとも私の、いいえ、私の娘のお願いを聞いていただけないでしょうか?」 「如何にもこの研究…

小説「国家機密のプロジェクト」

「判決。被告人を死刑に処す」 目の前に山のようにそびえ立つ裁判長から死刑宣告を受けた瞬間、男は全てが終わったという茫然とした表情になった。私の命ももはやここまでか。しかも冤罪であるというのに。 私は銀行強盗と殺人の罪をなすりつけられて裁判に…

読者の皆様へのご挨拶

読者の皆様はじめまして。私はファラデーと申します。このたび勝手ながらブログをはじめることとなりました。ここ「静物」には、私が創作しました詩や小説を随時、掲載していく予定でございます。お暇でしたらぜひお読みください。皆様のご指導ご鞭撻の程、…