2015-01-01から1年間の記事一覧

140字のエチュード―VoL.18

4:11 - 2015年5月31日 「The Bird and the bee」 蜂鳥はダリアの周りで何度も口ずさむ またやってみな またやってみなって 蜜の滴る花弁は 風に何度も祈りながら 散り際の美を繰り返そうと 己れの万華鏡の内側で 感謝と裏切りに揺れた・震えた・そして飛んだ…

140字のエチュード―VoL.17

6:11 - 2015年4月26日 春はあけぼの、人魚と猫が見つめ合う。移り気な視線が一つに交わった時、空には再び満天の星が煌き、海では蛍が燥いでる。瑠璃色の世界全てにスポットライトが照らされて形作られた二つの影がゆっくりと重なり合えば、黒い愛は天鵞絨よ…

小説「虹の樹」

桜の花弁の散った後、樹には沢山の言葉が生い茂っていた。忙しなく街中を歩き回る人々の目には表面的な「失望」しか映らなかったものの。精々、恋人と別れた直後の人が「惜別」の一葉を見出すのが関の山と言った所か。 言葉は一体、誰に対して、どんな思いを…

140字のエチュード―VoL.16

2015年3月31日7:31 鶏もも肉を切る包丁に込められた力は、同時に他の何かも一緒に切ろうとしていた。切先のつっかかりが胸の奥に重たくのしかかってきたものの、その正体を掴むことはできず、貴方はただひたすら包丁の柄を強く握りしめている。緊…

140字のエチュード―VoL.15

2015年3月20日16:18 薔薇の香りが石鹸で洗った手からもリップクリームを塗った唇からもトイレの中からさえも漂っているというのに、この家に薔薇の花は一輪も咲いていない。棘のない薔薇の存在できない哀愁が、隙間窓から外へ漏れている。そよ風…

140字のエチュード―VoL.14

2015年3月12日4:31 「I was born」 で、 生まれさせられた 私! なのに 「I was died」 と、 言えないのは何故? 2015年3月13日6:27 枯れ葉がひらひら落ちていつた 新芽を隠した枯木は死んだ振りをしている 流れ星がきらきら光つて…

140字のエチュード―VoL.13

2015年2月28日23:25 横たわった柔らかい肋骨は 痛みという名の見えない弓矢を やっとのことで飛ばして折れた その内側に潜む心を守るために 露わになった心に僕は そっと指先を近づけた 瞬間! 見えなかったはずの弓矢が 震える僕の善意と擦れ違…

昔詩「XXX」

もう分からないんだ 誰が好きとか 何がしたいとか くそ何やってるんだ 早く行かなきゃ 前に進まなきゃ それなのに嗚呼― 窓ガラスで切り取られた空はどんより 雨が降ったり止んだり、また降ったり 僕は行ったり来たりで、ヒ・ト・リ・キ・リ 深夜3時につぶや…

140字のエチュード―VoL.12

2015年1月1日23:30 この街に雪は積もらない。生命の種はきっと何処かで春を待っているのだろう。臼に餅のつかれる音を久々に聞きたいと思った。襷が知らぬ間に受け継がれていくのをぼんやりと目にしながら。来年の目標は何か、と年明けに尋ねられ…