140字のエチュード―VoL.14

 

 2015年3月12日4:31

 

 「I was born」

  で、

  生まれさせられた

  私!

  なのに

 「I was died」

  と、

  言えないのは何故?

 

 2015年3月13日6:27

 

 枯れ葉がひらひら落ちていつた

 新芽を隠した枯木は死んだ振りをしている

 流れ星がきらきら光つていつた

 輝きを纏つた石屑は生きた振りをしている

 

 2015年3月13日7:04

 狭き門には入るのも難しいが、そこから再び出るのも難しい。命に潤いを充分に含ませてから入るのが賢明だろう。唄が聴こえてくる。ルーツの分からない、けれども美しい旋律を至る所に散りばめさせた唄。楽しい気分になってきた。竜巻が身体の奥底から沸き起こってくるような、激しい前途に対する希求。

 

 2015年3月13日18:29

 ふとんの中でバレリーナのような格好をして眠っている君。耳元で何かに囁かれたのか、咄嗟に体幹の軌跡はなだらかなカーヴを描いた。闘っているのか?懐かしくもない夢の中で。電車の通った颯爽とした音が、君の今いる世界で雷雲の怒り声に聞こえてしまうのは、単なる錯覚に過ぎないことを伝えたくて。

 

 2015年3月13日23:19

 

 手を繋いだ親子が

 野原を駈けてゆく

 陽光は二人を祝福するかのように

 光の道を架けてて、消えた―

 

 白い世界には何が待つ?

 何も待つていないとしても

 今なら許せるような気がした

 

 2015年3月15日6:09

 

 カラスは!

 暗闇全てを翼に変えて

 彼方へ消えた、そして迎えた朝の中で

 カレラは身体いっぱいに抱きしめている

 天鵞絨のように艶めいた小さな夜を―

 

 2015年3月16日6:15

 

 走れないことを気に病んでいるガラスの馬は

 始めから存在しない下半身を求めて何処へも行けない

 ところが街頭を歩いている人々はみな、

 星々のフラッシュに瞬く其の姿を目にして

 どうか時間のスロウになるよう祈つた

 

 2015年3月17日6:40

 リストの弾丸みたいなメロディが僕の退屈を打ちのめす。捨てたはずの時めきが体内で反響する。ルビーの結晶を生成できそうな今、言葉のナイフで自分を傷つける勇気は、僕にはない。幾つかの悲しみを微塵切りする間に涙が出た。玉葱がハンバーグになっても悲しみが癒えることはなかった。食べたからだ。

 

 2015年3月18日7:26

 言葉のまやかしは本物の詩になりたくて、月に吠えた。何処にも犬や狼は見当たらず、辺りはシンとしていたが、声なき声の存在を南風や桜の蕾が証明していた。虫達も皆、本当は呼ばれてここへ来ているのに、招待状を貰った覚えはないと言う。だったら無理に思い出さなくてもいいよ。春はもうすぐだから。

 

 2015年3月19日7:29

 白鷺は暗闇の中で密やかに星空を眺める。誰にも気づかれないことに安堵しながら。そこへ微かな不安が、キラリ。星の雫を口に含んだ傍から川面の震えが拡がっている。さぁ、今こそ飛び立つ時だ!何度もそう思っては翼を広げる。脚を地面から離そうと試みる。白い影絵のシルエットは美しいロゴになった。