140字のエチュード―VoL.13

 

 2015年2月28日23:25

 

 横たわった柔らかい肋骨は

 痛みという名の見えない弓矢を

 やっとのことで飛ばして折れた

 その内側に潜む心を守るために

 

 露わになった心に僕は

 そっと指先を近づけた

 

 瞬間!

 

 見えなかったはずの弓矢が

 震える僕の善意と擦れ違った

 思わず後ろを振り返った僕の

 操る身体を陽射しは貫いた

 

 2015年3月1日6:23

 もう生きなくてもいいなんて寂しいよ。弱音を吐いたその顔を思い浮かべては空々と泣く。苦しいな。なんでこんなこと、私がせんといけんと。トロイメライのメロディにそんな疑問をゆっくりと溶かしてもらえるように目を閉じる。ルーレットはいつまでも回さない。命に逆らってでも、貴方を守れるのなら。

 

 2015年3月4日5:35

 朝起きて、忘れ物に気づいた私は再び眠りたいけど。ドキドキが止まらなくて無理みたい。犬もはしゃいで吠えている。ルフィも相変わらず元気いっぱい。いない世界の人間が、私の心を伸ばしていく。クイズはさらなるクイズを呼ぶ。舞台はふとんの中から宇宙の果てまで。できないことなんてない、きっと。

 

 2015年3月4日23:58

 透空を惜しみつつじは微笑む。村雨は既に降りかけず。瑞相が朽ちる気配はなさそうで、熱はこの街に篭ろうともう少し必死でいたい。石橋を撫でるざらざらした掌の感覚が未だに生きていて、情けある。鏤骨の思い出は不自然か。神さびる哀しみに慰められつつじは笑う。上を向いて留まりたい。いつも一緒。四時限目の後にいつもの場所じゃない所で。でえと、なんてもう死語でしょう。嘘ばかり吐いているのは本当のことを何一つ知らないから。喇叭水仙はずっと枯れたまま。待ち合わせできない事実は明白なのに何故わたしは此処でもない何処かで待ち惚けていたいのだろう。宇宙人は誰もさらってくれやしない。

 

 2015年3月5日5:38

 ぬり絵に白は似合わない。イカスミでも代わりに塗っとけ。欠落した色彩感覚をモノトーンで埋め合わせ。狭い額縁にもいい加減、飽きた所で、さぁここから大脱出。月の光を紐解いて、元たる太陽までひとっ飛び。瓶詰めされた宇宙は透明を着飾る。ルールを塗り潰してまで君が手に入れたいものって一体何?

 

 2015年3月6日20:34

 豆乳の海に浸かった鱈はその身をきゅっと引き締めていた。沢山の萎びた白菜達は味力を増した事実に未だ気づいていない。意味を消化し価値を吸収していたつもりの内臓が泣いているか笑っているかなんて僕にはどうでもいい、とは言い切れない。今、温かかった喉元が明朝に向かってゆっくりと冷めていく。

 

 2015年3月9日7:32

 夜空にUFOが浮かんでいるかと思いきや、あなたの唇だった。星屑入りのコーヒーは「きらあまい」そうだから、飲み過ぎない様に気をつけて。だけど、仮にあなたが今夜の全てを一滴残らず吸い尽くしたとしても、別に朝がすぐに訪れる訳でもこの先ずっと白夜が続く訳でもないから心置きなく、おやすみ。

 

 2015年3月11日7:22

 失われる処か、まだ手に入れてすらない時を求めて夢を描こう。迂回する道もそんなに悪くはないよ。よかったら勇気を振り絞って一歩前に踏み出せば?なんて無責任なことは言えないけどさ。桜の樹の下に姿を隠し続ける根が彼方のこと大好きだって。照れた花弁は何度も風に乗ろうとしてはベランダに散る。