詩「翼」

 

いつも君はついてきていた 

僕の歩くその後ろを

はしゃぐように 

生き急ぐように

 

いつも君は駆け回っていた 

小さな家の空間を

僕の生まれる前からずっと・・・

 

僕がこの世に存在しなかった時

いつも君は

誰の糸に導かれていたのだろうか

 

君がいなくなった

現在になってはじめて

僕はそういう疑問を抱いた

 

僕にとって君は必然だった

かけがえのない生命だった

それが幼い僕には分からなかった

ありきたりな言霊を軽蔑していた

もしかするとそれは

今でもしているのかもしれない

 

しかし ある時 ふと後ろを

振り返って眺めて見ても

君の姿はもうどこにも映らない

そこにはいつもと何も変わらない

暗い玄関と

そこに薄っすらと

浮かび上がるような

微かな白い輪郭のみが

僕の思い出として

永久保存されている

 

僕は想う 

白い糸を生やしていた君を想う

逝きつくところまで

辿りついてしまった君を想う

時空を超えて 

君の糸を手繰り寄せて想い出す

そして 見出す

あの時 君の身体から

火照りが醒めようとしていた

夜明けの時刻に君が

どんな思いで僕に

添い寝をしていたのか・・・

 

白い糸は束になって 

いつしか誰も見たことのない

愛くるしい翼になって

誰も聴いたことのない

美しい音楽を奏でて

君を星空の彼方へ連れてしまった