詩「♀ok♂nna」

 

 締めつけられている

 今、私の胸は締めつけられている

 太陽は優しく そよ風は心地良く

 私を取り巻く 平凡でありきたりな幸福

 皆の目にはそう映る

 そう映るように私が振舞っているから

 そう振舞うように誰かに強いられているから

 誰に? もしかしたらそれは

 人間ではないかもしれない

 そんな詩を何処かで読んだよ

 形而上学のカタストロフィ

 そのことに私が胸を痛めていると

 近所の精神科医は得意気に指摘してくる

 例えばそういうことにして 

 冗談じゃない! バカな大人は

 しばしば難解な言葉を使って

 執拗に私たちをカテゴライズしたがる

 そう言い返してやりたかった

 抽象は捨象を伴う カタカナは残酷だ

 

 締めつけられている

 今、私の胸は締めつけられている

 私というジレンマに 自由という束縛に

 ボーボワールは本当にサルトルに愛されて

 女になったの?

 私には誰かに愛される自信もないし 誰かを愛せる自信もないし その何方の自由もない気がするし そうかと言ってレズでもないし バイでもないし 勿論オンナでもないし だけど 処ジョだし そんな暴露したくなんかないし でも紫外線は浴びたくないし そもそも何にもなれていないし 要するにニートと言っても過言ではないし バカにされても仕方のない人間だし でも紫外線は浴びたくないし 唐突に非実用的ナ閃キガ頭ヲ擡ゲル死ネッ!

 人々の想像を遥かに超える産物を創りなさい

 私の欲求に塗れた無意識がそう私に囁きかける

 バカにしないで・・・ そんな事すれば

 私も都合のイイ芸術家集団の仲間入りだネ!

 そんなら周囲に迎合した態度を取りなさい

 答えに窮した私は堪らず外に飛び出したそう

 私は誰かに話しかけられるにも関わらず、話しかけようとはしなかった

 私は誰かに話しかけられたにも関わらず、話し続けようとはしなかった

 私が自由の刑に処せられるのに大した犠牲は生まれなかった

 私が言葉を失うまでに大した時間はかからなかった

 

 締めつけられている

 今、私の胸は締めつけられている

 夢という名のファシズム

 偽善という衣を被った甘えに

 何だか肌寒くなってきた こんな時、

 私の血管はか細く泣いているみたい

 私の身体に含まれた微かなぬくもりを逃がすまいとしくしくと泣いている

 その事実を私は未だ実感できていないということにする、絶っったい!

 その結果、私は独り ぬくもりは煙に巻かれて

 遠いとおい上空へとうすーーく広がっていく

 そうして気づかぬ間に求める熱を昇華させてゆくらしいよ

   

 太陽は嘘つきだってさ

 

 巧妙に私達に与えるフリをして

 実は私たちから吸いとっていく

 傲慢な思想を許してはいけない

 それは永遠に裡にとどめておくべきかと

 雀がそれに同意するかの如く跳びはねる チュンチュンと鳴く そして羽ばたく チュンチュンと・・・ 羽ばたくぅ? ちゃうちゃう

 雀はただ気まぐれにそよ風に流されているだけで そのそよ風すらも気まぐれで チュンチュンとも雀は鳴かないで ちゃうちゃうとも私は言わない

 

 決して、言わないい

 

 締めつけられている

 今、私の胸は締めつけられている

 コンビニエンスな展開に

 俗物を摘まむ震えた指先に

 私はこの先一生詩になり得ない言葉を

 B4の白紙に綴る 私の歴史なんて何もないのに

 締めつけられている

 私は私の名前に

 私は私の性別に

 私は私のやりたい事に

 私は私の大好きな人に

 

 それでも、私は、

 私はの限り私の字架を咥える

 

 私は、

 締めつけられているんじゃないっ!

 

 私はっ、

 私の胸を

 私の十で

 

 締めつけているんだ

 

 締メツケテイルンダ

 

 締 MetsuketeIru、♂nna